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「Nuestra Justicia」展覧会について

2015年にアルゼンチンで爆発したフェミニズム運動の高まりは、その後ラテンアメリカ全体を覆う大きなうねりとなって現在まで続いている。「緑の波」とも呼ばれるその広がりは、2020年にアルゼンチンでの中絶合法化をつかみ取り、その後コロンビア、ボリビア、チリ、メキシコそしてエクアドルが次々と中絶を完全に非犯罪化、または中絶ケアへのアクセスを大幅に拡大する動きに至っている。

しかしこのラテンアメリカのフェミニズム運動の隆盛は信じられないほどの数の犠牲者の上に成り立っている。メキシコのフェミサイド(被害者が女性であるという理由で起こる殺人事件)では1日に10人が犠牲になっているという統計(注1)もある。では、日本ではどうだろうか。

日本は殺人における被害者の女性比率が世界で最も高い国の一つだ。国連薬物犯罪事務所(UNODC)の2014年の報告(注2)によれば、殺人被害者の中の女性の割合が高いのは日本と香港がトップで、52.9%を占める(注3)。ただ、日本ではフェミサイドの定義が正確になされていないため、フェミサイドとしての数値の把握がされていない。2021年にフェミサイドの実態把握の要望書と1.7万人分の署名が法務省に提出された(注4)が、その後解明は進んでいない。

 実際には痴漢や盗撮、路上でのぶつかり行為、付きまといなど、日常には統計に表れない暴力があふれている。警察や裁判所が被害者の味方になってくれるとも限らない。そうした状況に声をあげる女性議員や活動家は脅迫やインターネット上での苛烈な誹謗中傷、嫌がらせ的な訴訟に悩まされている。状況を改善しようとする法律の制定や行政の支援も手薄で、ジェンダー暴力を軽視する雰囲気が蔓延している。

 今回、日本初展示となるエクアドルのアーティスト二人の作品はそれぞれ、フェミニズムやジェンダー暴力に基づいて、その土地の女性たちとともに作り上げたフェミニスト・アートである。

ここにある作品はすべて「対話」をコンセプトに含んだ作品である。私たちは住んでいる土地も文化も言語も違うけれど「対話」を通じて、お互いの差異を認めあい、ジェンダー暴力を軽視する雰囲気に抗い、連帯することができると信じている。

 最後に、私たちはこの展示を通じて、ジェンダー平等と女性・ディスデンシアの権利を支持するために、アートと対話が提供する無限の可能性を称賛する。私たちは共に前進し、社会的変化を促進し、すべての人々に平等な機会を提供するための取り組みを強化し続ける。

​展示作家と作品名:

Andrea Zambrano Rojas、Calzones Parlantes

Diana Gardeneira、Yo Si Te Hago Todo

フェミニスト手芸グループ 山姥、政治的な手芸部 「人権」「生存」バナー

Our Clothesline with Monica Mayer、Our Clothesline

闘う糸の会、みどりのバンダナ

ディスデンシアとは

Disidencia(ディスデンシア)とは、家父長制の強いるジェンダーやセクシュアリティに反抗するジェンダーアイデンティティの人のこと。ラテンアメリカにおいてこの用語は、従来のジェンダーとセクシュアリティの二元的なカテゴリーに当てはまらない人々の存在と権利を認め、肯定するために、セクシュアルとジェンダーの多様性の文脈で一般的に使用されている。現状の統計上の数字は男女という区別しかないため、ディスデンシアの人々が出生時に割り当てられた性別でそこに含まれていることは記載しておきたい。
 

注1 Centros de Justicia para las Mujeres en México 2021

注2 Global Study on Homicide 2013

注3 Global Study on Homicide 2013

注4 オンライン署名 小田急線事件を契機に、フェミサイドの実態を解明し対策を講じてください(Change.org)

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